
江戸時代は妖怪が元気だったようで、絵巻や絵双紙にたくさん描かれている。江戸の人たちは妖怪と感じる能力、すなわち妖怪感度に優れていたようだ。
現代の人たちはあくせく働いて、悲壮な顔をしているが、江戸人たちは生きる楽しみを知っていたに違いない。そしてそれは、妖怪が身近にいることから得られたのだろう。
今回、広重の「東海道五十三次」を見立てて、「妖怪道五十三次」を二年がかりで描いてみたが、日本橋から京都までの五十五枚を全部並べて眺めて見ると、なるほどなかなかおもしろい。自由に旅することもままならなかった江戸時代の人は、広重の風景画を見て心を遊ばせていたのだろうが、そこに妖怪たちが風景と人間と混然一体として混じりあっていたら、もっと喜んでくれたにちがいない。
なにかと嫌なことが多い暗い時代なのかもしれないが、五十五枚のお化けの旅物語で、ユカイになっていただきたいとおもっている。